葬儀における優先順位

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葬儀ではだれの都合が優先される? 

葬儀にかかわる人の中で優先順位をつけるとしたらどのような順番になるか考えたことはあるでしょうか。

たとえば、以下の4つにグループ分けをした場合、優先順位はどのようになるでしょうか。

  • 故人
  • 故人の家族(親・子供・孫・兄弟姉妹)
  • 故人の親戚
  • 弔問客

 冷静な状況で考えると、①故人②弔問客 ③親戚 ④家族という順序になる方がほとんどかと思います。葬儀は故人が迷うことなくあの世へ旅立っていただくための儀式であることを考えれば、故人を一番優先することになるでしょう。そこからお参りに来ていただく方で身内から遠い人を優先していくという形になるでしょう。

優先順位が変わると・・・

しかし、突然やってくる葬儀でつ自分が喪主や喪主に近い立場だとすると、上記のような優先順位と矛盾する選択や行動をしてしまうことがあります。その例をいくつか見ていきたいと思います。

故人のご遺体を家に連れて帰るかどうか

 病気を患い病院で亡くなる方の多くは、生前に「家に帰りたい」とおっしゃいます。病気の治療などで生前家に帰れなかったとしたら、亡くなった後だとしても一度は家に連れて帰りたい、こう思うのは故人の気持ちを汲んだ行動でしょう。しかし、「家を片付ける手間が大変」「家に連れ帰っても葬儀の会場が別だからまた移動しなければいけない」「家に連れて帰ると近所の人への対応がある」ということが思い浮かんでしまい、家に帰さず式場へ直接移動する選択をする場合もあります。このような気持ちが先に立ってしまいますと、故人よりも家族の事情を優先してご遺体の安置先を決めることになりかねません

葬儀の会場はどこにするか

 会場を決めるにあたっても、故人や弔問客のことを考えて選ぶのか、家族や親族の都合を優先して選ぶのかで結論が変わります。故人や弔問客を優先した場合、故人と縁のある人たちが来やすい会場や弔問客を十分収容できる広さの会場を選ぶでしょう。ほとんど知人・親戚を呼ばない『家族葬』なのに家で行わず遠くの会場を借りて行う場合も、故人の気持ちを優先しているかどうか熟考する必要があります。

葬儀までの間故人に付き添うか

 つい最近までは、亡くなってから火葬されるまでの間ろうそくと線香が絶えないよう家族や親族が交代でおりをするということが当たり前でしたが、近年は葬儀当日までろうそく・線香を絶やさないということが行われない家庭が出てきています。さらに言えば、故人が葬儀会場や遺体安置所に置き去りにされ、付き添いすらないという状況も起こり始めています。会場に一晩取り残されるまでではないにしても、ふとしたことで故人が一人きりにされている状況は間々ままあります。たとえば、

  • 納棺後通夜が始まるまで会場に故人が独り取り残される
  • 通夜終了後、喪主までも弔問客の見送りに出てしまった結果誰もいない会場に故人が独り残される
  • 葬儀当日の朝(特に朝食の時間帯)、故人だけが会場に取り残されて遺族は誰もそばにいない

 喪主の一番の役割は、故人にできる限り寄り添い、故人を独りにしないことです。この役割を喪主が果たせるように、ほかの遺族や親族が喪主をサポートするというのも、葬儀においては非常に重要なことであると私は考えます。

葬儀は慈悲の実践の場

 様々な状況がありますので、すべての状況で故人を優先することはできないかもしれません。コロナ禍が会場選択等に影響を与えることもあります。また、故人が突然亡くなった場合と、長く危篤状態だった場合とでは、遺族の遺族が故人の死を受け入れるための時間にも大きな差がありますので、遺族が葬儀に臨むに際し取る行動は変わるかもしれません。

 特に、長い間故人を介護していたり、長期の危篤状態で夜中も含め病院の往復を繰り返していた遺族は、大きなストレスを抱えている場合もあるでしょう。一生懸命介護・看病されていた遺族ほど「故人を最後の瞬間までしっかり看病することができた」という気持ちが生じ、亡くなった瞬間ある意味ホッとする気持ちになってしまうのかもしれません。

 仮にそうだとしても、その方の肉体が消滅するまでの数日間はもう二度と戻りません。故人との最後のお別れのひと時を、故人のために使うというのは大事なことではないでしょうか。

 葬儀は遺族のためでもあるし、故人を偲ぶ知人・友人の方たちのためでもあるのは間違いありません。しかし、まずは葬儀の目的が故人の冥福を祈ることであるならば、故人がどんなことを望んでいるのか、ということを何よりも優先して考えて葬儀の在り方を決めることは故人の供養にとって非常に大切なことではないでしょうか。

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